天日に晒して布団を干すと、布団が劣化する(傷む)場合があるといわれています。
実際のところ、天日干しで本当に傷むのでしょうか?
「繊維機械学会誌 Vol. 33 (1980) No. 1」という雑誌に記載された「“高級羽毛”の構造と物性(著:竹中 はる子)」という論文から、羽毛布団と日光による傷みに関してを引用してご紹介したいと思います。
なお、雑誌の発行年は1980年ですから、現在の布団素材とは違う可能性があります。
そのため、あくまで参考程度にご覧下さい。
一般的にいわれている繊維の劣化に関して
布団に限らず、繊維が日光の紫外線によって劣化するといわれている事柄を、前述の論文より引用します。
一般に繊維などの高分子物質は紫外線照射により劣化することが調べられている. ただ劣化の程度は物質の種類により差があるとしても,酸化反応,分子量の低下,結晶化度の増加などの構造変化を生じ,その結果引張強度,伸度,衝撃強さなど力学的性質の低下を伴うとされている.
引用部分にあるように、繊維の強度や伸縮力などの特性が低下するとのことです。
ピンと来ない方は、輪ゴムを想像してみてください。
新しい輪ゴムは柔軟に伸び縮みしますが、古い輪ゴムは伸ばすとちぎれる可能性が非常に高まります。
繊維もゴムと同じで、繊維のもつ強度などが弱まると理解していただければ分かりやすいと思います。
論文に書かれた紫外線と羽毛の劣化実験
実際に実験を行ったとのことですが、実験の詳細は難しいので、何となくイメージできるであろう一文を引用します。
そこで紫外線の照射量の変化による羽毛の劣化現象をX線ディフラクトメータによる結晶化度の変化から検出を行った.
大雑把にいえば、紫外線の照射量を変化させて、その変化量ごとの劣化具合を調査したそうです。
実験結果
実験結果の内容は素人が詳細に理解するのは難しく、前項と同様にイメージしやすい部分のみ引用します。
照射後のfeatherの結晶格子の配列度と結晶化度が良くなっていることが認められたことから,劣化が生じていることが十分考えられる.
実験では劣化が生じている可能性が十分にある、と結論づけています。
さすがにこれだけでは根拠も分からないと思いますが、論文内では概ね以下のような事柄が書かれているようでした。
- 羽毛を構成する分子の結晶構造をX線を照射して測定
- X線の照射で回折強度を測定(X線が羽毛分子をどれだけ回り込むか)
- 「回折強度が上がる=結晶化が進む=劣化している」と想定
- 羽毛に紫外線をあてると結晶化が進んだため劣化した可能性が高いと結論づける
筆者は理系では無いため門外漢ですが、概ね上記のように理解しています。
羽毛布団の干し方の結論
論文の末尾には、以下のように書かれています。
したがって羽根布団は直射日光をさけ風通しのよい半日陰に干して水分を蒸発させるようにすべきであろう.
天日干しでは羽毛が傷むので、羽毛布団は半日陰干しする方がよいとのことです。
残念ながら、この半日陰干しに関して論文内に記述が無く詳細はわかりませんでした...。
熱の影響
なお、実験では紫外線照射ランプの発する熱が羽毛に影響するのかも調べられています。
結論としては、ランプの熱が65度でも羽毛に劣化の影響はないとのことでしてた。
ダニは50度以上で死ぬといわれていますので、とりあえずダニが死ぬ温度でも羽毛が傷む可能性は低く、安心して高温乾燥を試せると思います。