布団などの寝具につくカビやその胞子はハウスダストの原因になります。
年がら年中鼻炎や後鼻漏が酷い方は、カビに対するアレルギー反応かもしれませんので、ご注意を。
この記事では「Medical Mycology Journal vol.55」の「環境真菌と生態」という論文を主に引用してご説明します。
「真菌=カビ」でよいのかもしれませんが、筆者は生物学者ではありませんので論文に従い、論文に対してメントする場合、カビではなく「真菌」と書いています。予めご了承ください。
寝具のカビ
論文では、寝具にいるカビについて以下のように書かれています。
寝具として掛け布団,敷き布団,枕の真菌を比較した13).いずれも糸状菌の多いことは他の生活品と同じであるが,酵母の比率も高くなる.個々では,生体に常在するMalasseziaと同じくRhodotorula,Candidaも合わせるとさらに比率が高くなる(Fig. 7).Malas-seziaは10∼16%であり,明らかに生体由来といえる.同じくCandida等も10%前後であり,いずれも寝具は生体にかかわる真菌が特徴となる.
「酵母」と「糸状菌」
真菌には「酵母(yeast)」と「糸状菌(mould)」があります。専門的な話ですので分かりにくいのですが、「望月先生の真菌講座」というページが分かりやすかったので、ご紹介して下記に引用します。
真菌は発育時の形により大きく酵母、糸状菌と呼び分けられています。
酵母は単細胞で、出芽することによって増殖します。
糸状菌は菌糸が伸び、枝分かれしながら成長します。
出芽(しゅつが)というのは、簡単にいえば焼いたお餅が膨れるようにして、親となる細胞から発生する無性生殖の一つです。
くっ付いたままさらに出芽を繰り返したり、出芽で生まれた細胞が切り離される場合もあります。
枝分かれしながら増える「糸状菌(しじょうきん)」は、一般的にイメージされるカビのイメージそのままかと思います。
キノコなども糸状菌ですし、麹も糸状菌です。
論文内のその他の補足
論文内にある「寝具として掛け布団,敷き布団,枕の真菌を比較した13」の「13」というのは、先行研究である「寝具類の真菌分布と布団洗濯による真菌除去効果 アレルギーの臨床17:64-67, 1997」であり参考文献として記載されています。
「Fig. 7」は掛け布団と敷き布団と枕の3つを対象に、発見した真菌をグラフで示しています。
また、菌の培養としてはおなじみの、シャーレに寒天培地らしきものを敷いて繁殖させた写真があります。
シャーレでの繁殖をみると、真菌も生物なのだと改めて感じられます。
寝具に生息する真菌の特徴
室内に生息する真菌は糸状菌が多いようですが、寝具に関してはほかよりも酵母の比率が多くなるそうです。
つまり、室内と布団とでは発生している真菌の種類が違うと言えます。
論文でも生体由来、言い換えれば、人間の身体がなければいるはずがない真菌が10%前後いるとのことですし、寝具の真菌の特徴です。
ダニ同様に、人間のフケやアカなどの老廃物が真菌を育てている以上、毎日使う布団や枕には定期的な手入れが必要となる根拠の一つといえるでしょう。
放っておけば、毎日エサが共有されて繁殖し放題ですから。
寝具にいる真菌(酵母)の一例
前述で、寝具にいる真菌は生体由来の酵母が多いことが特徴だと書きましたので、その酵母について論文から引用します。
酵母(Rhodotorula, Candida, Trichosporon):
生息は水系,好湿環境に多い.水系由来とヒト由来が多く,生活環境では普遍的な分布をとる.中温性∼高温性,好湿性である.
Rhodotorulaは赤色を呈し,浴室,台所,洗面所の水系に好んで分布する代表的な酵母で,黒色真菌と同じ生態である.
Candidaは土壌やヒト由来が多く,生活環境や食品などに広く分布する.C. albicansが主要菌種である.Trichosporonは水系や好湿性環境に広く分布する.
ご覧の通り、基本的に「好湿性」、つまり湿度が高い所を好む真菌です。
ダニにしても繁殖には湿度がそれなりに重要なのですが、真菌も同様なのです。
つまり、敷きっぱなしの布団のようにじめじめしているとはっきりわかるものは要注意でしょう。
カビの根絶は困難
人間は体温調節のために汗をだすのが普通ですから、水分を寝具にしみ込ませない生き方は不可能です。
もちろんウォーターベットのように身体に接する寝具が布でなければ問題ないでしょうが、その場合はウォーターベットと床の接地面が問題になりそうですし。
どう頑張ってもカビは発生し増殖しやすく、根絶は不可能だと認識していたほうが現実的です。
環境真菌とアレルゲン
カビの胞子はハウスダストの原因、つまりアレルゲンになり得るのですが、実際にはカビの死骸もアレルゲンとなります。
論文では、室内の真菌には以外と死んでいる細胞が多いと触れられていました。
ダニもその死骸がアレルゲンになるので、微細な生物はその死骸の除去も重要なポイントになりそうです。
寝具のカビ対策は?
このページで引用している論文はあくまで真菌の調査と検討であり、カビの除去には触れられていません。
とはいえ、実際に私たちの身近に存在するアレルゲンであり、カビ対策をとらねばアレルゲンは減少(抑制が精一杯かもしれませんが)させられません。
室内は掃除をしたり、場合によっては薬剤で部分的に殺菌することになり大変な印象ですが、布団に関しては洗濯という手があります。
「洗える布団」をご利用の場合は自宅でなんとかできる場合もありますが、前述の細かなカビの死骸などをきれいにとれるかは洗濯の仕方(と布団の素材)次第でしょうか。
寝具のカビ対策における効果的な手段
ご自宅での布団の洗濯が不安な方や、自分で洗濯するよりもしっかりと布団を洗濯したい方は、宅配の布団クリーニングサービスをおすすめします。
常日頃、服を洗濯している主婦の皆さんにお伝えするまでもありませんが、洗濯は一度すればOKということはあり得ません。
定期的に行う必要があります。
布団も同じですが、さすがに毎日する必要はありませんので、半年に一回程度を目安に洗濯を行うことをおすすめします。