ハウスダストは花粉症と同じようにアレルギー性鼻炎を引き起こす原因です。
特に寝具の中のハウスダストは非常に質が悪く、睡眠時間中私たちの体内に取り込まれます。
花粉ならマスクを付けていれば多少は防げますし、寝具のハウスダストも就寝時にマスクを付ければある程度は防げるでしょう。
しかし、安心できるはずの家の寝室でマスクを付けなければ寝られないのは耐えられませんし、効果も高くはなさそうです。
ハウスダストとは
最初にハウスダストの定義を。
ハウスダストとは「House Dust」と書き、文字通り「室内の塵」を指します。ハウスダストに含まれるものはいろいろとありますが、代表的なものは以下の通りです。
- 埃
- フケなどの皮膚の欠片
- カビなどの細菌
- ダニ(死骸・糞)
これらの細かい物質が気管から鼻や喉の侵入し、体内の防衛機能が過剰に働いてしまうことが「アレルギー症状」です。
基本的には体の過剰反応で、最初の刺激を受けてから連鎖的に長く続きます。
例えば花粉症の場合ですと、花粉の無い場所まで行っても鼻水が止まらないのは、体内に花粉が残っているだけでなく、反応自体に歯止めが利かないためです。
ハウスダストと浮遊粉塵
室内環境学や類似分野では、ハウスダストをもうすこし厳密に定義しているようです。
「日本建築学会環境系論文集」のvol.75にある「日本・韓国の住宅におけるハウスダスト中DEHP濃度の測定」の論文でドイツ技術者協会の定義が書かれていましたので引用します。
ドイツ技術者協会VDI 4300 Part 84)では,「室内の床や,家具,窓の表面などに堆積したホコリをハウスダストとし,空気中に漂っているホコリは浮遊粉じんとしてハウスダストとは対称的に扱っている。ハウスダストとは変動する個体の無機物,あるいは有機物であり,自然発生物または人工物から成る。また,室内から発生したものだけでなく,外部から進入した砂なども含まれる」と定義されている。
つまり、床上などに堆積したものを「ハウスダスト」といい、空気中に浮かんでいるものを「浮遊粉じん(塵)」というそうです。
しかしながら研究者ではない一般人としましてはあまりこれらを区別する必要性が薄い(堆積したものもを巻き上げて吸い込んでいると思われるため)ので、当サイトでは堆積したものも浮遊しているものまとめて「ハウスダスト」と記載しています。
床上30cmが危険?
ハウスダストは「床上30cmに滞留している」というのはよく聞きますが、調べた範囲では根拠となる論文は見つかりませんでした。
では全くのでたらめかといえばそうでもないようで、Panasonicの空気清浄機のページには床上200cm/100cm/25cm/0cmの4段階の高さにシャーレを置いて粉塵を採取した写真が載せられています。
この写真を見る限り、床上25cm前後でハウスダストの量にかなり差がでることが見て取れます。
つまり、根拠となる論文はみあたりませんが、家電メーカーの実験では実際に裏付けがとられてはいるようです。
この「床上30cm」というのは子供が四つん這いでハイハイする時に問題となります。
また、床に敷いた布団で寝る場合は大人にとっても問題です。
ハウスダストが滞留している層に顔をつっこんでいる状態となるのですから。
「ハウスダストは下に向かって落ちて積もる」という点を忘れない方が良いでしょう。
寝具のハウスダスト
寝具の中に存在するハウスダストの多くはダニとその死骸と糞、そしてカビです。
昔は布団たたきで叩いてダニなどを落とすのが一般的でしたが、現在では表面のダニを多少落とせても逆に内部に潜り込ませてしまういうのは常識です。
もちろん、叩けば確かに表面に近い部分にあるハウスダストは多少飛ばせます。
見た目に粉が飛ぶよう見えるため効果が期待出来そうですが、ごく一部に過ぎないのです。
逆に言えば、その何倍もの量のハウスダストが布団の中に潜り込んでいる証明ともいえるでしょう。
また、「天日干しはダニに効果がある」といわれていた時もありましたが、これも内部にダニが逃げて行くだけなので、表面からダニが一時的に居なくなるだけです。
黒いビニール袋(ゴミ袋)をかぶせて密封して温度を上げるという方法もありますが、それでも温度が低く長時間の加熱は難しくなります。当然ですが季節にも左右されますし、真冬の昼では全く効果が期待出来ないでしょう。
生きたダニと死んだダニとフン
動かない糞や死骸と、動き回るダニ、そしてそのダニのエサ。
これらがハウスダストの原因です。
「生きているダニ」と「細かく砕けたゴミ」という2つに分けた場合、「細かく砕けたダニ」は布団の丸洗い(丸洗い可能な布団の場合)と掃除機で多少はなんとかできます。
定期的な清掃で対処するべきはこちらです。
しかし、「生きているダニ」には対しては、ご家庭では対応が難しいといえます。
コインランドリーの乾燥機や自宅用布団乾燥機等の手段はありますが、完全とはいえません。
苦労をしても効果が薄いなら、自宅での対応は諦めた方がムダがありません。
何のためにお金を払って布団を洗濯にだすのか、という疑問は、このように順を追って考えれば明確になるかと思います。
自宅ですべて対応可能なら依頼などする必要はありませんが、自宅でできないのであれば専門業者に依頼するという単純な流れです。
無理に自宅で対応しようとすると、ただ単に布団を傷めて買替えることになるでしょうから、その点も加味しつつ判断をする必要があります。