ハウスダスト対策の一環として有効であると思われる、ハウスダストに対する空気清浄機の効果に関する論文をご紹介します。
当サイトでも繰り返し書いていますが、論文はあくまで論文に過ぎません。
医学的な真実ということではなく、都合の良い部分だけを抜き出して判断しないよう、参考程度にご覧下さい。
今回は「耳鼻咽喉科展望 Vol. 36 (1993) No.4」に掲載された 「鼻アレルギー患者に対する空気清浄機 (ベルフロースーパー) の使用経験」という論文を対象とし、ここから引用します。
空気清浄機の効果
先に結論を書きますが、論文が公開されたのは1993年だという点に留意してください。
この記事を読んでいるのと同じ年代ではありません。
それでは、まず実験結果を以下に記載したいと思います。
しかしそのまま引用すると分かりにくいため、論文の内容に基づいて筆者が箇条書でまとめる形にします。
まずは効果があった事柄です。
- ハウスダストのアレルギー症状が軽い人は改善された
- 鼻水に対しては、8週間以降で効果がでてくる
- くしゃみは8週目で改善されたが、12週目では効果が薄れた
続いて効果がなかった事柄です。
- ハウスダストやダニのアレルギー症状が重い人は改善されなかった
- 4週間では効果があまりない
- くしゃみは8週目で改善されたが、12週目では効果が薄れた
- 鼻閉(鼻づまり)と嗅覚障害は改善されなかった
上記から分かることは、「軽度の鼻水なら空気清浄機の効果が期待できる」となりそうです。
逆に中度以上や、鼻づまりや嗅覚障害に関しては効果が期待できません。
くしゃみは微妙ですが、軽度のくしゃみで特定の期間内だけなら軽減できそうです。
重要なポイント
この実験で重要なのは以下の2点です。
- 空気清浄機の性能に依存する
- 空気清浄機の置き場所に依存する
空気清浄機という機器を使った実験のため、当然ながら「どのような機器」を「どのように使うか」で効果が変化してしまいます。
空気清浄機の性能
実験で使われた空気清浄機の仕組みに関しては以下のように書かれています。
ベルフロースーパー(図1)は,塵埃,悪臭,雑菌等を含んだ汚染空気をプレフィルターを通して本体内に取り入れ,帯電フィルターにて集塵を行う。
帯電フィルターは静電気により,微粒子を捕集する機能を持っている。
時代もありますが、マイナスイオンなどの疑わしい仕組みは全く絡んでいません。
仕組みは単純で、まず物理的に目の細かいフィルターで汚染物質(ハウスダストなどの浮遊物質)を絡めとり、次いで電気を利用してさらに小さなホコリを吸い付けています。
帯電フィルターというと分かりにくいかもしれませんが、原理的にはプラスチックの下敷きをこすって静電気を貯めて髪の毛を逆立てる状態と同じです。
空気清浄機の中では、髪の毛ではなくホコリが電気を帯びたフィルターにくっつけられるという仕組みですね。
何らかの触媒を利用してどうこうというのがありえないとはいい切れませんが、基本的にはフィルターでどれだけ浮遊物質を取除けるかが最重要だと思います。
空気清浄機の設置場所
空気清浄機の設置場所として論文には以下のように書かれています。
朝の症状を軽減させるためには,機器を頭部の上方に設置し,クリーンエアを頭部から足元に流すのが好ましい。
常にクリーンエアーを頭部に送ることが肝要であろう。
こちらも単純な理屈で、綺麗な空気を出す機器の近くに顔があるほうが効果が高いという話です。
あたりまえですが、空気を吸い込む部分ではなく、奇麗にした空気を排出する部分が顔から足の方向に向くように置きます。
空気清浄機の手入れを怠ったり、性能が悪かったりした場合は目も当てられなくなりますので注意が必要です。
なお、裏を返せば室内に空気清浄機があっても顔と距離があれば効果が薄いと言えますので、こうなると日中効果を実感するのはなかなか難しいですね。
ただ起床時に鼻水や咳が酷い場合は多いので、その意味では睡眠時さえ効果があれば許容範囲の効果が期待できるかもしれません。
実験に関する情報
実験に関しての情報を以下に記載します。
論文は内容の前提を確認する事が最重要ですから、できるだけ目を通してください。
実験の目的
この論文は1993年のものであり、当時ですでに家庭用の空気清浄機が出回っており、この空気清浄機を使うことでハウスダストに起因するアレルギー反応にどのような効果があるか、という点を調査する論文です。
製品名は「ベルフロースーパー」だと思うのですが、調べてもメーカー名すらわからず、海外の製品なのかなと考えています。
この製品は恐らく1993年当時に存在していた最新式の空気清浄機だと思いますので、現在(記事執筆時は2017年)購入可能な機種では無いはずです。
そのため、実験結果はあくまで当時のものという点に注意してください。
もっとも現在は当時よりも機器の性能が上がっているとは思いますので、最低限期待できる効果と考えられなくもありませんが。
実験の対象
実験の対象者は以下の通りです。
鹿児島大学医学部附属病院耳鼻咽喉科外来を受診し,通年性鼻アレルギーの診断を受けた13名を対象とした。
年齢分布は5歳から36歳(平均年齢16.5歳)の,男性5名,女性8名,患者の主抗原はすべてハウスダストである。
年齢は幅広いですが、全員ハウスダウトによるアレルギー性鼻炎の患者です。
余談ですが、1993年当時からハウスダストに悩まされていると思うと、何年なっても根本的な解決方法はないのだろうなと多少くらい気持ちになってしまいますね。
実験の方法
ベルフロースーパーの使用期間は12週間とした。
その設置場所は患者の居住時間の最も長い場所を選択させた。
空気清浄機の運転時間は可能な限り一日中とした。
患者には必ずアレルギー日記の記入を義務づけ,くしゃみ回数,播鼻回数,鼻閉の程度,嗅覚障害および日常生活の支障度について記入させた。
また,観察期間終了時には本機に対するアンケート調査を行った。
12週間をかけた実験とのことです。
空気清浄機の設置箇所は、それぞれの環境に合わせて各自で判断されています。
アレルギー日記に記載されたくしゃみ回数,揚鼻回数,鼻閉の程度,嗅覚障害および日常生活の支障度をもとに毎日の平均値を算出する。
次いで,週単位の平均値を算出する。
これをもとに使用前から各判定週までの推移を,ANOVAを用いた推計学的処理により,症状の変化量の危険率を算出した。
基本的には日記に記載させた内容からの判断となり、問診やモニターによる観測ではありません。
そのため色々と被験者自身に起因する問題(回数の計測ミスや、鼻づまりの状態の判断基準の曖昧さなど)が考えられますが、その辺りを統計的手法でなるべく調整している模様です。
まとめ
空気清浄機はハウスダストに起因するアレルギー症状に効果は期待できますが、症状の種類や重さによっては効果が期待できないようです。
また、設置場所や性能によっても効果があったりなかったりするでしょう。
ハウスダスト対策として空気清浄機を使う場合は、過度の期待はせず適切な場所に適切な状態で設置してわずかでも効果がでるようにすることをお勧めします。
残念ながら筆者は家電に詳しくないのでオススメの空気清浄機などはご紹介できませんが、以下のような空気清浄機選びのポイントはお伝え出来そうです。
- フィルター性能が良い
- 排出される空気ができるだけ清浄
家電店の店員の方に話を聞きながら選んでみてください。