布団クリーニングを実行した場合、本当に汚れは落ちるのでしょうか?
各サービス会社ごとに実験したデータを公開していることが多いので、皆さんも何度か目にしたことがあるかと思います。実は、布団を丸洗いでクリーニングした場合の汚れの落ち方を実験した論文もあるのです。ただし、今回ご紹介するのは皮脂などの油汚れではなく、水溶性の汚れに限りますが。
以下では「繊維製品消費科学会誌 Vol. 34 (1993) No.5」に掲載されていた「木綿わた敷き布団の洗濯(第2報) ―中わたの水溶性汚れ除去の様相―」という論文から引用します。
論文自体はだいぶ昔のものですが、1993年当時の洗濯技術での結果だと理解してご覧いただければ、現在の効果を伺い知ることができるはずです。布団に限りませんがクリーニングの技術も進歩していますので。
概要
この論文では、木綿の敷布団を4枚で実験しています。実験のために、普通の布団の大きさは実際の1/3となっています(恐らく切断の上縫製)。
洗浄方法は2種類で簡単に言えば、「洗浄液とブラシによる表面洗浄」と「遠心脱水機に井戸水と柔軟剤を順次投入したすすぎ」です。実際には各手法により詳細な条件があるのですが、とりあえず「表面をブラシで洗う」と「ぐるぐる回してすすぐ」の2つと理解していれば大丈夫かと思います。
用いた4つの布団は以下の通り。なお、スペースの問題もあり論文から項目を抜粋しています。
布団 | 期間 | 使用者 |
---|---|---|
ダブル布団/新しいわた | 5年 | 壮年 |
ダブル布団/新しいわた | 10年 | 壮年 |
長持ちで倉庫に15年保存/打ち直したわた | 20年 | 青年 |
30年使用中に打ち直したわた | 30年 | 高齢者 |
調べ方
論文では、洗浄時の廃液の食塩量を調べています。具体的には、論文では以下のように示されています。
ここで本報では,洗濯による水溶性汚れの除去過程を知り,洗浄効果の改善の手がかりを得るために水溶性汚れを食塩とみなし,使用した木綿わた敷き布団の中わたの洗浄前後の食塩量と表面洗浄及びすすぎ過程の廃液の食塩量を測定し,除去過程の検討を行った.
つまり、水に溶ける汚れを食塩と定めて、その食塩がどれほど布団から流れ出たのかを調べることで、水溶性の汚れがどれぐらい落ちるのかを調査したわけです。
結果
長々と書いても分かりにくいので、要点だけ抄録から引用します。
1) 洗浄により中わたの食塩量の約80%が除去され, 使用年数の新しい布団ほど除去効果が高い. 2) すすぎ開始後5~30秒に食塩流出が多く60秒間でほとんど流出する. 3) ブラシ洗浄は表面洗浄だけでなく中わたの汚れ除去に効果がある.
食塩(水溶性の汚れ)の80%が洗浄でとれたそうです。新しい布団ほど洗浄の効果は高いとも示されています。
驚くことに、すすぎは最初の60秒の間に殆どの食塩が流れ出るとのことです。水に溶けるだけに、流れ出るのも早いということですね。
もちろん油汚れは60秒で落ちないでしょうから、あくまで水溶性の汚れはということですが。
油汚れは専門業者に依頼
水溶性の汚れは60秒でかなり落とせるならば、仮に「洗える布団」をお持ちの方は以下のような事が言えるかもしれません。
- とれやすい水溶性の汚れは洗濯機で丸洗い
- とれにくい油汚れは専門業者に依頼
日々、というほど頻繁ではないと思いますが、ご自宅での布団丸洗いと専門のクリーニング業者への依頼の差が明確にできるかと思います。