布団の素材ごとの、アレルゲン吸着度合いの違いに関する論文がありましたので引用してご紹介したいと思います。
なお、この論文は2002年のもので、多少古い論文です。
当時の代表的な繊維素材に関してであり、現在の素材と同じと限りませんので、その点ご留意ください。
論文は「耳鼻咽喉科展望 Vol. 45 (2002) No. 6」に掲載されている「通年性アレルギー性鼻炎に対する環境調整 洗濯について(著:榎本 雅夫, 大西 成雄, 嶽 良博, 齊藤 優子, 池田 浩己, 十河 英世, 船越 宏子, 芝埜 彰, 瀬野 悟史, 硲田 猛真)」という論文です。
実験の詳細
まずはじめに実験の方法を引用します。
論文にはパジャマの洗濯実験もあるのですが、今回必要な情報は布団の布地に関する実験であるため、以下の「布地の違いによる溶出量の検討」のみ引用します。
1)布地の違いによる溶出量の検討 素材の異なる5種の布片を1×2cmの大きさに切り出し,高濃度のDerp(ヤケヒョウヒダニ)の溶液中に布片を2時間入れた。 取り出した布片をアルミホイル上で乾燥させ材料とした。 この布片2枚ずつ2mlの0.2%BSA/0.01MPBSpH7.4に入れた。 付着した気泡を取り除くため試験管に投入時10秒間振盪し,室温で静置した。 静置時間は10,30,60,120,180分,24時間とし,溶出量を測定した。 Der1量の測定時は数秒間撹拌し,10分静置後の上清を検体とした。
実験用に小さなサイズで素材を切り出し、それを用いています。5種類というのは以下の5つです。
- 木綿
- 化繊
- 木綿と化繊の混紡
- 羊毛
- 絹
論文では化繊と記載されていますが、化学繊維のことです。ただ、この化学繊維の詳細はわかりませんでした。
布団の素材ごとのアレルゲン吸着度合いの違い
それでは実験結果です。
1.溶出時間と溶出量(布地別) いずれの布地においても,溶液中に漬けるだけでダニアレルゲンは溶液中に溶出された。 布地別による溶出時間と溶出量の関係を図1に示した。 溶出される量は溶出時間によって異なっていたが,最初の10分間は急速に溶出され,その後は徐々に溶出された。 溶出量は羊毛,絹,木綿,木綿と化繊の混紡,化繊の順に多く,これらの素材順にダニアレルゲンが吸着しやすいことを示していた。 溶出時間と溶出率(%)の関係を図2に示した。化繊,木綿と化繊の混紡,木綿では80%溶出率が30分であったが,羊毛では約60分,絹では約120分であった。
素材に関わらず、溶液につけるだけでダニアレルゲン(ダニの死骸やフン)が溶け出たそうです。
「木綿わた敷き布団の洗濯(第2報) ―中わたの水溶性汚れ除去の様相―」でも書かれていましたが、やはり最初の短時間の段階で、多くの汚れやアレルゲンが溶け出すようです。
それ以降も汚れ自体はでますが、量は減少するようです。
素材ごとにダニアレルゲンの取れた量を多い順に上から並べると以下のようになります。繰り返しますが、1が最もアレルゲンを多く流しだし、5が最も少ない、となります。
- 羊毛
- 絹
- 木綿
- 木綿と化繊の混紡
- 化繊
「アレルゲンが多く落ちる=洗濯の効果が高い」ともいえはしますが、論文ではその視点ではなく以下のように指摘しています。
これらの素材順にダニアレルゲンが吸着しやすいことを示していた。
羊毛、たとばウールなどの素材の布団は多くのアレルゲンを蓄えている、とも言えそうです。
絹も同様に吸着が多いようですが、絹という素材自体が縮みやすく、あまり洗濯されないとも考えれ、それだけに問題は大きいかもしれません。
ダニアレルゲンを減らせば改善する可能性がある
この論文には以下のような記述もあります。
通年性アレルギー性鼻炎患者では,通常,健常者よりも,寝室や寝具などのにダニアレルゲン量が多く,重症の患者の家庭ほど高いダニアレルゲン量を示すこと,気管支喘息とほぼ同様,寝室,寝具で室内塵1g中のダニアレルゲン量を2μg以下に減らすと症状が改善する症例が多いこと等について著者らは報告してきた5~8)。
当サイトの他のいろいろなページでも書いていますが、やはり通年性アレルギー性鼻炎慢性的な鼻炎を防ぐ場合には、室内環境の整備が非常に重要といえます。
切っ掛けや悪化の原因は一概には言えませんが、お煽りが遅く長引いた入り、慢性化の原因としてはほぼ確実に室内のハウスダストが原因であり、布団からハウスダストを排除することの重要性は非常に高いでしょう。毎日顔を近づけているのですから。
薬で抑えることも必要ではあるのですが、面倒がらずに室内環境の整備に手をつけることをお勧めします。